今問われる・・・守りたいものは何か、大切にするものは何か。それを阻むものに、どう立ち向かうか?
「日本人にはしっかり考えてほしい。というのも、日本もドイツと同じように、言われたことに、流れに従属してしまう国民性だから。どんどん問いかけをし、何も考えずに受け入れることはやめよう」
・・・とヒルシュビーゲル監督はいった
ドイツ人の家具職人ゲオルク・エルザーは「だれに言われたわけでもなく、自らの目と頭で大きな危険を察知し、だれにも相談せず1人で動いた。無力だからとあきらめたり、だれかがなんとかしてくれるだろうと任せたりはしなかった」
収容所で5年以上すごした後、敗戦直前に銃殺された
メルケル首相は昨年、「戦争を防ぐために自らの意志に従って行動した」と賛辞を贈った
こんな人物が実在したことを初めて知った。ドイツ人の家具職人ゲオルク・エルザーだ。
1939年秋、ナチス・ドイツのポーランド侵攻によって第二次世界大戦が始まる。その直後、36歳の彼はミュンヘンの演説会場に手づくりの時限爆弾を仕掛け、総統ヒトラーの殺害を計画した。
その一部始終を描いた映画「ヒトラー暗殺、13分の誤算」が今週公開される。
無差別殺人の爆弾テロは狙いがどうであれ、非難されるべきものだ。彼の爆弾は7人の命を奪った。映画の中では、秘密警察の局長が「お前は何の罪もない人間を殺したんだ」と厳しく責めたてる。その局長は後に、ユダヤ人絶滅計画で中心的な役割を果たすのだが……。
エルザーは、なぜ独裁者を殺さなくてはならないと考えたのか、その過程が彼の目を通して描かれる。
ドイツ南部の小さな町。美しい田園風景や酒場でのダンスと音楽に包まれた日常が、次第に変わっていく。自由にものが言えない息苦しさが漂い、ナチス支持者とそうではない者との「分断」が生まれる。影響されやすい子どもの言動も変わった。異論をはさむ者、障害を持った者、ユダヤ人と親しくする者への差別と排除が公然と始まる。エルザーが臨時で働く工場では戦車生産が進んだ。
パンフレットに解説を書いた東海大学の鳥飼行博教授(環境平和学)は、労働者で高等教育も受けていないエルザーの鋭い感受性と強い覚悟を指摘する。「だれに言われたわけでもなく、自らの目と頭で大きな危険を察知し、だれにも相談せず1人で動いた。無力だからとあきらめたり、だれかがなんとかしてくれるだろうと任せたりはしなかった」と語っている。
彼は収容所で5年以上すごした後、敗戦直前に銃殺された。東西分裂のせいで歴史から消されたが、再統一後にようやく日が当たる。メルケル首相は昨年、「戦争を防ぐために自らの意志に従って行動した」と賛辞を贈った。
日本での公開を前に監督のヒルシュビーゲル氏は面白いことを言っている。「日本人にはしっかり考えてほしい。というのも、日本もドイツと同じように、言われたことに、流れに従属してしまう国民性だから。どんどん問いかけをし、何も考えずに受け入れることはやめよう」と。
守りたいものは何か、大切にするものは何か。それを阻むものに、どう立ち向かうか。多くのことを問いかける映画である。
詳細は・・・